4. 「舞姫」を読む基本的視点 (メモの2の続きが残っていた。)
一般に対立は同じ基盤の上でしか生じない。四迷は日本の社会全体を見渡していたから、階級的な分化が視野にあった。この意味で認識が深く広い。豊太郎の生活と意識における対立物は、豊太郎が生活の基盤としているエリートの世界にある。豊太郎が一致し、対立しているのは天方伯と相沢である。豊太郎はエリスとも関係しているから、当然エリスと一致し、また対立している。豊太郎は天方伯や相沢と基本的に一致しており、そこにおける対立が豊太郎の人生の全体を規定している。エリスとの関係はその一部分である。天方伯との関係の変化、展開によってエリスとの関係は規定される。この関係の中で相互作用がある。豊太郎にとってエリスとの関係が基本的な関心であり、重要な意義を持っている。といっても、エリスとの関係はそれ自体として、つまり独立して、他との関係の中でもっとも基本的な位置において重要な意味を持つのではない。エリスとの関係は、天方伯との関係において重要な意義を持っている。エリスとの関係は天方伯との関係に傷を付けるのではないか、エリスとの関係があっても自分をエリートとして認めるかどうかという意味でエリスとの関係は重要である。それ自...