平家物語巻第一 祇王 現代語訳
「祇王」は平家物語の中でも、後で挿入されたと見られる独立した作品で他の段に比べると長くまとまった作品である。シンプルな書き方であるが内容が深く複雑である。だから、是非古文で読む必要があり、古文としてそれほど難しくはないが、細かに読まないと深い内容を取り込めないところがある。そのために、古文をざっと読むために簡単に参照するために現代語訳をした。意訳をせず、古文にできるだけ近い形で意味を理解できるように訳している。
祇王
入道相国は天下を手のうちに握られたために、世の非難をはばからず、人の嘲りをも顧みず、不思議の事をばかりなさった。例えば、そのころ都に聞こえた白拍子の上手、祇王、祇女という姉妹がある。とぢという白拍子の娘である。姉の祇王を入道相国が寵愛されたため、妹の祇女をも世の人がもてはやすこと一通りでない。入道相国は母のとぢにもよい家を造ってやり、毎月米百石、銭百貫を贈られたので、家中が富み栄えること一通りでない。
そもそも、我が国に白拍子が始ったのは、昔鳥羽院の御代に島の千歳・和歌の前、これら二人が舞いだした事である。初めは水干に立烏帽子、白鞘巻をさして舞ったの...