このノートは、もともと、チェーホフの全集を第一巻から順に興味深い作品を取り上げて、全体の構造を概観するための覚書として書いたものです。書いたというのは、nivty文学フォーラムの13番会議室で、第三巻くらいまで書いたからで、そのあと私的な事情で中断しています。今回、ここに掲載するために、はじめのいくつかを読んでみたところ、覚書として書き飛ばしていただけに、大幅に変わりそうですので、13番で読んだ方も興味のある作品については読んでみてください。どれほど変化するのか、また対して変化しないのかは覚書なのでいまのところわかりません。
チェーホフの作品が高度の芸術的内容をそなえてくるのは、この全集で言えば第8巻あたりからです。それがいかに驚嘆すべき内容に満ちているかは、初期の優れた作品から順に読んでいくとでよりはっきりすると思われます。小説、あるいは、芸術における内容とはなにかを考える上でも、芸術的内容が形成されてくる過程を具体的に知るためにも、ひとつひとつの作品を厳密に分析するのと違ったこうした読み方も独自の意味をもつでしょう。また、初期の作品から、高度の芸術的内容が獲得されていく過程を見ることは、創作に興味を持つ人にとっても独自の面白さがあるかもしれません。
(この批評に用いたテキストはすべて、中央公論社から昭和51年に発行された再訂版のチェーホフ全集による。)
第一巻の1
- 『隣の学者への手紙』
- 『二兎を追う者一兎を得ず』
- 『パパ』
- 『リンゴのために』
第一巻の2
- 『婚礼の前』
- 『聖ペテロ祭り』
- 『裁判』
- 『芸術家の妻』
第一巻の3
- 『忘れた!!』
- 『告白、あるいはオーリャ、ジェーニャ、ゾーヤ』
- 『緑の岬』
第一巻の4
- 『逢いびきはしたものの…』
- 『不必要な勝利』
- 『逃した魚』
- 『いまわしい話』
- 『六月二十九日』
第一巻の5
- 『奥様』
- 『生きた商品』
- 『咲きおくれた花』
第二巻の1
- 『首になった』
- 『二つのスキャンダル』
- 『牧歌的な、いや、どうして!』
- 『こらえきれずにペテン師に』
- 『ゆがんだ鏡』
- 『告白』
- 『唯一の手段』
- 『催眠術の会』
- 『妻は出ていった』
- 『釘の上に』
- 『床屋で』
- 『ぐず』
- 『勝利者の凱歌』
- 『謎の性格』(1883.3)
第二巻の2
- 『ぬすびと』
- 『言葉、言葉、また言葉』
- 『おっかさん弁護士』
- 『古典科中学生の災難』
- 『会計係助手の日記から』
- 『おじいさんそっくり』
- 『年に一度』
- 『小役人の死』
第二巻の3
- 『嫁入り支度』
- 『親切な酒場の主人』
- 『アルビヨンの娘』
- 『とりなし』
- 『照会』
- 『秋』
- 『でぶとやせた男』
- 『名誉商人の娘』
- 『郵便局で』
- 『海で』
- 『駅長』
第二巻の4
- 『中傷』
- 『安全マッチ』
- 『クリスマスの夜』
- 『自由主義者』
- 『勲章』
- 『七万二千』
- 『辻御者』
- 『家庭教師』
- 『狩場で』
- 『おお女よ、女よ』